鷲尾翼のブログ

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【エッセイ】#38『脱力主義/ナポレオン・ダイナマイト』

  久々に多忙だ。

  「忙しい」という言葉は聞くのも言うのも抵抗があるが、今はそれに縋りたい気持ちでいっぱいだ。

  簡単に説明すると、今は朝の6時45分。

  2時間後にはワクチンの接種会場に向かうため、家を出なければいけない。なので、このエッセイを2時間、いや、その他諸々の事情を踏まえると、1時間ちょっとで済ませたい。

  加えて、音楽家として、現在進行形で作曲中だ。「あとちょっとだけ…」と試行錯誤を繰り返していたら、昨日では終わらず、今に至る。

  僕は音楽家・文筆家・芸術家と三足の草鞋で活動しているが、時に牙を剥くことをすっかり忘れていた。

 

  こうしている間にも、20分経っている。

  タイムリミットが刻一刻と迫っている中、僕はあることを心掛けている。

  それは「脱力」だ。

 

  僕は自分で負荷をかけ過ぎる人間だ。

  言わば「強迫概念」のようなもので、責任感のある仕事はもちろん、何気ない些細な頼み事も、湯気が背中から出るくらい必死になってしまう。やっている最中も依頼してくれた人を思い「こうなったらどうしよう…」という確率の低いシミュレーションが何個も浮かび、それに苦しみ続ける。結局、そういうときは大抵失敗する。

  そうなると、強迫概念がタラレバ話に変わって、すっかり忘れている頃に思い出し、またタラレバを繰り返す。

  このタラレバは自分に対する「負荷」と変わり、それは時間が経っても消えず、精神を食いしばる。

  この負のループを解消してくれるのが「脱力」だ。

 

  僕も「脱力」という言葉を借りているが、現状この状態を説明することは少し難しい。簡単に言えば「別に…」「どうせ…」と締切や期待などの責任を放棄している状態に近い。

  最近脱力を心掛けていることは、LINEだ。

  以前の僕はLINEの返信や送信に対して幾つものルールを作ってしまい、文章やスタンプに対して酷くこだわってしまった。おかげで「了解しました」みたいな何気ない返事も「!」をつけるかつけないか、スタンプも添えるか、「了解」とさらっと送るか、とにかく悩んで1時間はかかることも多かった。

 

  それ以降、脱力を心掛けて、対策としてLINEの通知をオフにした。

  一時期、アプリの赤い丸がとにかく嫌で、軽く寝込んだこともある。なので、すぐに返信する「即レス」のルールを無くした。そして、返信に困る何気ない一言や返事は、YESでもNOでもない変なスタンプを送ることにした。スタンプでセンスを問われる威圧感も脱力した。

  よくLINEの返事で異性を判断する系の記事をよく見るが、それで判断する人もどうかと、脱力してからよく思う。

 

  もっと言えば、今の「三足の草鞋」という仕事の形も脱力だ。

  最初は音楽家一本で活動するつもりだった。しかし、僕は熱し易く冷め易い飽きやすい性格で、それが自分の好きな音楽が嫌いになると思った。しかし、成功している音楽家を調べると、人一倍ストイックで、僕もそうしなければいけないと思い、音楽と距離を置きたくても自分を追い込んだ。

  けど、自分は他の人とは違った。

  そんな時に星野源に出会い、そのマルチな肩書きに憧れて、もし好きなことが嫌いになった時の「逃げ道」として「文筆家」と「芸術家」を加えた。仕事という型に捉われず、好きなことに対して脱力しながら、好きなことを続けている。

 

  そんな三足の草鞋も、今の多忙の枷になっている。

  脱力というより、現実逃避したい。

 

  ワクチン打ってきます。

 

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【本日の映画】

監督・脚本:ジャレッド・ヘス
出演:ジョン・へダーなど
制作:2004
製作費わずか400万円ほどの超インディーズ作品ながら、全米で大ヒットを記録した脱力系学園コメディ。アメリカの片田舎に暮らす冴えない高校生のイケてない日常が独特のダルなリズムで綴られてゆく。

 

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