鷲尾翼のブログ

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【エッセイ】#13『スパイの掟/007 スカイフォール』

 「スパイ」という職業は男なら当然憧れる。

 スーツ姿で華麗に敵を倒し、見たことないアイテムを使いこなし、サイバー攻撃でハッキングしたり。何より極秘に活動するミステリアスなイメージが、スパイという職業の魅力を掻き立てる。

 当然だが、僕はスパイにはなれない。だが、妄想の世界では別だ。

 

 僕はある組織の一員だ。

 黒いスーツ、黒いネクタイ、こだわりの革靴を着こなしながら、今日も見知らぬ国のどこかで密かに極秘のミッションをクリアしていく。

 まぁ、簡単に言えば「スパイ」だ。

 

 僕にとってこの職業は、一度死んだようなものだ。

 それまでの僕は名前があった。これを読んでいるあなたと同じように、名前があり、住所があり、Amazonで簡単に買い物が出来た。しかし、今は足跡を消していく毎日だ。初めは名前と家を失い、家族を失い、ネット上に残る全てのアカウント、履歴を消した。

 

 「5W1H」という言葉を知っているか。

 「When(いつ) Where(どこで) Who(誰が) What(何を) Why(なぜ)したのか?」を意識すると、ワンランク上の社会人になれるという。

 しかし、この「5W1H」とは対極の立場に僕はいる。

 

 一度死んだ僕だが、やはり死は怖い。

 今こうやって文章を書いている後ろで拳銃を構えられているかもしれない。試しに振り向いてみたが、この場所は安全みたいだ。

 これまで何度も銃声が飛び交う現場に遭遇したこともあるし、何度も命の大切さに気付かされる。

 

 今、何気なく飲んでいるコーヒーも、後何度味わえるのだろうか。

 何度この素晴らしい景色を眺められるだろうか。

 何度好きな音楽を聴けるだろうか。

 

 今、僕が生きているのは、どこか悪あがきのように思えるが、そんなわがままもどこか愛おしい。

 一度死んだ僕だが、誰よりも生きていたいようだ。

 

 その時、背後から硝子の割れる音がした。

 その直後、目の前が赤く染まり、僕は死んだ。

 

 スパイが日頃の感謝をし始めたら、暗殺される。これもスパイの掟だ。

 どうやら、僕はスパイには向いていないようだ。

 

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【本日の映画】
007 / スカイフォール (字幕版)

007 / スカイフォール (字幕版)

  • 発売日: 2014/02/26
  • メディア: Prime Video
 
制作:2012
007のコードネームを持つイギリスの敏腕諜報員、ジェームズ・ボンドの活躍を描くスパイ・アクションのシリーズ第23弾。上司Mとの信頼が揺らぐ事態が発生する中、世界的ネットワークを誇る悪の犯罪組織とボンドが壮絶な戦いを繰り広げる。
 
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