鷲尾翼のブログ

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【エッセイ】#09『創造と破壊を貫く脳内/マルコヴィッチの穴』

 僕の頭の中には少なくとも3人居る。

 音楽家、文筆家、芸術家と三足の草鞋を履く人間として、脳を使い分けている気がする。

 

 音楽家としての頭の中にいる人間の名前は仮に「オンガク」としよう。

 オンガクは、とにかく気分屋だ。

 ギターを手に取ったり、キーボードに手を置いたときにはオンガクは腕を捲りながら脳を支配する。オンガクは楽譜を読めないので、スマホで気分に合わせた好きな音楽を流して、その音楽に合わせて耳コピに近い状態で楽器を演奏する。

 それは気づけば30分、1時間と楽器を弾き続ける。昨日まできっちり時間を割り当てて決めた綿密なスケジュールもオンガクのせいで、大概崩れてしまう。

 しかし、終わりは急に訪れる。

 急に倦怠感を深く感じ、さっきまで心地よく聴いていた音楽も聞き苦しいものになる。簡単に言えば「飽きた」状態だ。

 その時には、オンガクはもう脳にはいない。

 

 次に、文筆家として。名前は「ブンピツ」としよう。

 ブンピツは、集中力が他と比べて高い。今、こうやってパソコンとにらめっこして文章を書けているのは、ブンピツのおかげだ。

 しかし、その集中力を発揮するには条件が必要だ。

 机の上にはパソコンとその周辺機器、そして飲み物。それ以上置いてはいけない。スマホタブレットが手元にあったらブンピツはそっぽを向いてしまうだろう。

 そして、無計画に文章を書いたりしない。

 ブンピツが何をテーマに書いて、何を伝えたいのか。それが決まるまで腕は組んだままだ。そして、準備が整ったら一気に書き進める。

 これが、ブンピツの集中力の秘訣だ。

 

 最後に、芸術家として。名前は「クリエイト」だ。そのままカタカナに変換するのはここまでくるとアイデアが枯渇しているのかと疑われてしまう。

 

 ここで、あるカミングアウトをしよう。

 実は、オンガクとブンピツは兄弟で、その親がクリエイトだ。

 

 クリエイト家の家訓はただひとつ。

 「創造と破壊」だ。

 何もない状態から、音や言葉、色や形を組み合わせて「創造」していく。しかし、これでは作品として綺麗すぎてしまう。人間でも100%の完璧な人間がいたら、憧れより不気味で、まるでロボットに感じるだろう。

 そのために、「破壊」が必要なのだ。

 完璧な芸術に対して、どんな形で壊していくか、どんな形で汚していくか。こうして生まれた作品は、紛れもないその人の芸術であり、個性だ。

 

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【本日の映画】
マルコヴィッチの穴 (字幕版)

マルコヴィッチの穴 (字幕版)

  • 発売日: 2014/03/15
  • メディア: Prime Video
 
制作:1999
スパイク・ジョーンズの長編デビュー作で、“俳優ジョン・マルコヴィッチ”の頭へとつながる穴を巡る不条理コメディ。その奇想天外な脚本が受け、脚本を担当したチャーリー・カウフマンは数々の賞を受賞した。
 
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