鷲尾翼のブログ

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【エッセイ】#08『愛してる/バッファロー'66』

 音楽家としての表現のひとつにこんな言葉がある。

 

 「愛してる」

 

 文章にすると恥ずかしいが、歌にすると意味も込めて相手に伝えられる愛情表現のひとつだ。

 しかし、この愛してるという言葉は言わば、動詞だ。

 寝ている、食べている、読んでいる、走ってるなど「○○している」という動詞の文法で愛を表現していることで、数多くのミュージシャンが頭を悩ませた。

 

 ある人は「『愛してる』という言葉は普段使わないから、歌詞には使わない」という。

 ある人は「『愛してる』という言葉は今でも分からないが、あえて使っている」という。

 ある人は「愛という言葉は真心、恋という言葉には下心」という

 

 僕も「愛してる」という言葉は使わないようにしている。その理由に「愛してる」より「恋してる」の方が動詞だからだ。

 

 恋は、言わば衝動に近い。

 その人を思って発する言葉や行動は、散々映画で2時間たっぷり描かれている。その実らせていく工程は、衝動という言葉にふさわしい動詞のひとつだ。

 それに比べて「愛」という言葉から生まれるエネルギーがよく分からない。男女が結びつく過程が「恋」だとしたら、ひとつのゴールテープを切った状態の関係性はあの頃の再確認でしかない。

 

 ある老夫婦が仲良く話したり、笑っていたりする姿を見たとする。

 それを見ている僕たちも、笑いあっている老夫婦もそれが「恋」なのか「愛」なのか誰も証明できない。

 そう考えると「恋愛」という言葉は、意味のない言葉だ。

 

 僕の中で決着がつきそうなとき、この言葉を思い出した。

 

 「I Love you」

 

 振り出しに戻された気分だ。単純に和訳すると「私はあなたを愛してる」になることがますます悩ましい。

 確かに彼氏を「ボーイフレンド」、彼女を「ガールフレンド」とカップルという関係性の中に「友達」という意識があるし、恋という概念も日本人特有なのかもしれない。

 そう考えると「I Love you」を使う日本人のミュージシャンは、音楽性に合わせて使っていると思うが、どこか意味も知らず使っている安直な部分も感じてしまう。

 悩んだ挙句、ひとつの結論に辿り着いた。

 

 「愛してる」という言葉は、日本ならではの古き良き言葉だ。

 その言葉を聞けたときは、素直に喜ぼう。

 

 ただし「愛してる」と平気でベラベラ言ったり、ゲームのように使う奴らには要注意だ。

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【本日の映画】

バッファロー'66 [DVD]

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  • 発売日: 2014/03/28
  • メディア: DVD
 

監督・脚本:ヴィンセント・ギャロ
出演:ヴィンセント・ギャロクリスティーナ・リッチなど
制作:1998
ヴィンセント・ギャロを一躍スターダムに押し上げたラブ・ストーリー。愛を知らないアナーキーな男と、彼に惹かれる女の寡黙な愛を描く。グレーを基調にしたビジュアルや独特のスロー描写など、他に類を見ないアーティスティックな作風が見もの。

 

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