鷲尾翼のブログ

鷲尾翼のブログ

音楽の話や連載エッセイ、ラジオの放送後記を随時アップ!

【エッセイ】#06『何かを失って、何かを得る/ベルリン・天使の詩』

 「何かを失って、何かを得る」


 人間が生きているうえで意識していても、していなくても起こってしまう人生のメカニズムだ。

 「記憶力」がその一例だ。頭の中を本棚として、記憶を本とする。新しい本を本棚に入れたいが、本棚にはその隙間がない。ましてや本の厚みや大きさも不揃いだ。

 こういうときに古い記憶を捨てなければいけない。また、そもそも新しい記憶そのものを忘れてしまうのも一つの手段だ。

 記憶の循環の末、次第に本棚の耐久性が無くなり、どんどん脆く崩れてしまい、記憶というものが限りあるものになってしまう。

 

 僕はよく周りの人間と比較をしてしまう。しかも、その対象はテレビや雑誌、様々なメディアで紹介されている「天才」と称される人間と比較してしまう。

 当然だが、僕は劣等だ。なので比較をして思うことは「僕には○○という能力や技術が無い」とないものねだりをしてしまうばかりだ。

 こんなことをするのは精神的にも肉体的にも悲劇を生むと知っていながらも無意識に比較をしてしまう哀れな人間だ。

 言わば、何かを失って、何も得ていない状態だ。

 

 しかし、僕にもちょっとした希望がある。

 色々失ってきたが、唯一機転となるものが欠落している。それは、人間関係だ。

 

 僕の人間関係は無に等しい。

 恋人も友達もいない。何か困ったことがあっても相談できる人もいないので、ネットや本で自己解決をすることが大半だ。

 しかし、友人や恋人がいない分、様々なメリットがある。

 友人と朝まで飲んだり、恋人と一日中デートしたり、何気ない長電話で時間が過ぎていったりと、自然と「時間」と「お金」が消えていく。

 その分僕らはその時間を、そのお金を自分のために使える。僕の場合、音楽のために、絵を描くために、映画を観たり、こうやってエッセイを書くために使っている。

 

 言わば「自己投資」だ。

 音楽や映画、本や芸術などの娯楽は腐ることはない。見れば見るほど経験値として自分の糧となり、新しい形を生み出している。

 しかも、その経験値はゲームの裏技のような短時間で都合のいいものではない。長い時間をかけて積み上げた者しか見えない景色がある。その人にしか出来ないことがある。

 なので、僕は友人がいなくても、恋人がいなくても、どこか楽しく生きている。

 

 僕は人間関係を失って、未来を得ている。

f:id:washitsuba:20210303082528j:plain

【本日の映画】
ベルリン・天使の詩 (字幕版)

ベルリン・天使の詩 (字幕版)

  • 発売日: 2015/01/22
  • メディア: Prime Video
 

監督・脚本:ヴィム・ヴェンダース

出演:ブルーノ・ガンツ、ソルヴェーグ・ドマルタン、オットー・サンダーなど

制作:1987

守護天使ダミエルは、長い歴史を天使として見届け、人間のあらゆるドラマを寄り添うように見守った。だが、親友カシエルに「永遠の生命を放棄し、人間になりたい」と打ち明ける。

 

【関連記事】