鷲尾翼のブログ

【エッセイ】#69『爪磨き』

 音楽に対して、特にギターについての興味が溢れ、外出の際にちょっとした時間を見つけたら近くの楽器店に訪れ、気になるギターを試奏したりしている。

 現状、買おうと決めているギターがあるため、フラッと寄った楽器店で衝動買いのようなことが出来ない。この葛藤を解消したくてウズウズしていた。

 

 そんな時に、ふと自分の爪を見てみた。決してボロボロと思わないが、自慢できるような綺麗さではない。

 そもそも爪自慢もどうかと思うが、ギターを弾くうえで爪の大事さは調べれば調べるほど重要だと承知している。

 それぞれの指の爪の長さをミリ単位で調整したり、ピックとの相性を兼ねてジェルネイルで爪を固めるギタリストもいる。

 僕の爪の長さは、爪を噛む癖を治せてないのもあるが、白い部分が見えないほど深爪ギリギリの長さだ。白い部分が見えていたとしても綺麗なアーチ状ではない。

 そんな可もなく不可もない爪を見て、思い切って2000円の爪切りと800円の爪磨きをAmazonで購入した。

 

 結論からすると、とても良い買い物をした。

 僕が買った2000の爪切りはカスタネットのような形状で、ヤスリが他の爪切りに比べて広めなのが特徴だ。この広めのヤスリが深爪ギリギリの僕にとって相性が良かった。爪を切るというより、ヤスリで削るぐらいがちょうどいいのだ。

 

 だが、本題はなんとなく買った爪磨きだ。

 買ってから気づいたのだが、男性で爪をピカピカに磨いている人は少数派だ。

 あるバラエティ番組で中堅芸人の一人がエピソードトークで爪磨きの話をして、カメラの前でピカピカの爪を披露したとき、番組観覧の女性から悲鳴が上がり、その芸人さんが落ち込んでいたのを思い出した。

 そのため、手元に持っていざ爪を磨こうと思うと、ゲテモノを食べるような抵抗感で躊躇してしまった。だが、せっかく800円払って購入したので、とりあえす左手の親指を磨き始めた。

 

 3分ぐらい爪を傷つけないように丁寧に磨いていると、先ほどまで濁っていた表面が見る見るうちに艶が出てきた。磨いてない右手の親指と比べると不思議な女々しさを感じた。

 左手の親指だけピカピカなのはさすがにおかしいので、他の指も丁寧に磨いた。ひとつの指に3分、それを残りの9本分と考えると、30分近く磨いていることになるが、そんなことは磨いている最中は考えもしなかった。

 

 外の景色が橙色から、薄暗くなる頃。ピカピカになった両手の爪をまじまじと見つめながら夕食を食べたり、スマホをいじったりして、ついにギターを弾くことにした。

 不慣れな爪のコンディションで少し戸惑ったが、そこは慣れだと腑に落ちたのだが、パッと鏡に映る自分の弾き姿に少し困惑した。

 コードを引く指、アルペジオでオシャレに弾いている指が、どう見てもフライドチキンを食べた後の指に見えてしまった。 

 今すぐティシュであのギトギト感を拭きたいが、それはさっきまで一生懸命磨いた爪そのもの。

 

 ゲン担ぎのような隠れたルーティンにしたかったが、何とも複雑な気持ちに駆られ、その日は、とにかく無心にギターを弾き続けた。

 

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