鷲尾翼のブログ

【エッセイ】#48『「半額シール」の力』

 最近、ある発見をした。

 それは近所のスーパーが刺身の半額シールを貼り始める時間が判明したことだ。

 

 かれこれ実家から引っ越してきて2年ほど経つのに、今更なことだが、どの論文よりも僕にとっては有益な情報だ。

 というのも、昨年の9月まで僕は回転寿司のバイトを週4日していた。始めた理由は今まで飲食店の裏方でしか働いたことが無かったのと、単純に寿司が好きだったから。

 そんな理由だったが、さすがに週に4日魚介類を見ているとスーパーで一番遠ざける存在になっていた。

 

 それから、回転寿司のバイトを辞め、今は夜10時から朝まで夜勤のバイトをするようになった。

 初めて飲食店以外のバイトを始めて早半年を迎えようとしているが、不思議なことに魚が恋しくなる。スーパーに行ったら真っすぐ鮮魚コーナーに向かいたい欲求が週に1回こみ上げる。

 これを「魚介ドラッグ」と呼ぼう。

 

 ここで秘密だが、その半額シールが貼られる時間を教えよう。「夜の7時10分から」だ。

 この事実を知るには、遠い道のりだった。

 

 まず、僕が魚介ドラッグでスーパーに行ったのが夜の8時。その時には時すでに遅し。残っていたのはシールも貼られていない日持ちのする冷凍の柵ブロックやいかそうめんの総菜がポツポツとあるばかり。僕はその日ポケットから財布を取り出すことはなかった。

 

 次に訪れたのは、夕方6時半。

 その日も迷わず鮮魚コーナーに行ったが、その時は「30%引き」実に悩ましい。手にとっては「もう少しか…」と戻して、「いや、今日はしょうがない!」と意を決して先ほど取った刺身を手にとってはまた躊躇して、それを三度繰り返していた。朝の情報番組だったら、「スーパーのマナーの悪い行動特集」で取り上げて、dボタンの視聴者投票でアンケートを募りながら、辛口コメンテーターに「喝!」と叱られてしまうだろう。今になって猛省する。

 気づけば夜の7時だ。「もう…いい加減にしろよ!」と自分に口を酸っぱくして叱り、何度も手にとっては戻したあの刺身盛り合わせをやっと手に取り、レジに並んだ。

 

 夕飯時とあって、近所の小さいローカルスーパーのレジは大行列だ。当然待たされる。すると、後ろの鮮魚コーナーが気になってしまう。何度も何度も後ろを向き、我慢できずにレジの列を抜け出し、あの鮮魚コーナーに向かい出す。

 「魚介ドラッグ」に合わせて「半額ドラッグ」も患ったようだ。

 

 半額ドラッグの僕は、「半額…半額…」と念を送りながら鮮魚コーナーを向かうと、今まさに店員が半額シールを貼るところだった。僕はすかさず「これもお願いします!」と差し出し、念願の半額シールが刺身盛り合わせに貼られた。

 それからのレジの長蛇の列は不思議なことに苦じゃない。気が付けば、夜の7時30分。小さなスーパーに一時間も滞在してしまった。好きな本屋でも30分で店を出るのに…

 

 改めて思うが、「魚介類=高級品」という価値観に未だにある。もちろん、庶民派の気持ちを忘れてはいけないが、それ故にあの未練タラタラな行動を繰り返してしまう。

 そんな価値観の救済アイテムとして「半額シール」があるのだ。これからも夜の7時に半額シールに会いに行こう。

 

 魚介ドラッグ・半額ドラッグ依存症者より。

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