鷲尾翼のブログ

【エッセイ】#47『初めての焼肉』

 最近、自宅の最寄り駅の近くに焼肉屋が出来た。

 二階にある店で、一部テラス席のような開放感のある店で看板を見る限りリーズナブルな値段でランチメニューを食べれる良心的な部分もあるが、僕には敷居が高い。

 なぜなら、僕は生まれてきて22年、焼肉屋に行ったことが無い。

 

 厳密には一回、親戚が務める会社の打ち上げに招かれ、そこで「焼肉」というものを経験しているのだが、所詮そこにいるだけ。人見知りや初経験の出来事に緊張して何も覚えてない。

 焼肉という存在を前に少し背筋が伸びてしまう僕だが、あの焼肉屋の「食べ放題ランチ」という文字に意欲が湧く。

 よし、行ってみるか。

 

 まずは、階段を上らないと店には入れないが、なぜだろう。どこか恥ずかしい。

    開放的な屋外階段かつ、駅前なので人混みの中、自分一人だけ恥さらしを受けながら階段を上る羽目になってしまった。

 おかけで、店内の扉を開くころには背中が丸みに丸まった状態で入店した。

 

 早速、店員さんにか細い声で「あの…この食べ放題を…」と注文すると、丁寧に食べ放題のシステムを説明してくれて最初に注文しなくても出てくる基本セットが運ばれた。

 豚肩ロース、豚カルビ、鶏もも。どうやらお手頃食べ放題なのか、牛はなかった。けど、僕にはどうでもいい。机の上にあるものが何なのか分からない焼肉童貞だからだ。

 

 初めてのトング、初めての銀の箸、見たことない調味料が二つ。

 ゴォーと力強いコンロの音と共に、恐る恐る肉を焼いてみる。ジューと美味しそうな音が鳴っているが僕は次の一手が分からない。将棋の竜王戦に出ているような気持ちだ。

 分けも分からず塩キャベツをムシャムシャ食べていると、あっという間に基本セットの3種類の肉が焼きあがってしまった。

 予想外の時間配分に急いでセルフサービスのごはんをよそいに行く。

 

 いざ、実食!と言いたいところだが、あの未知の調味料を解決していない。

 枝豆型にくぼんだ細長い皿に2種類の液体をちょっと垂らし、毒味のように味見した。どうやら焼肉のタレとレモン汁だ。これで万全の姿勢で焼肉を頂ける。

 

 左手に白米、右手にタレのついたカルビ。いざ、実食!

 美味い。これが焼肉か…。今までの鎖のように葛藤していた「焼肉」という経験を噛みしめながら基本セットを完食した。

 その後もシマチョウやレバーなどの内臓系やカレー、デザートをしっかり堪能して店内を後にした。

 

 1時間の食べ放題を終えた僕だが、ひとつ発見がある。僕は食べ放題に向いてない人間のようだ。

 無我夢中に食べていたら、途中で「あっ、ヤバい…」と危機感を悟る。しかし、目の前には茶碗一杯のご飯とカルビが一人前。そこに「お待たせしました!」とフライドポテトが来たときは絶望感が牙をむく。

 実際、1時間の食べ放題は20分が食事、残りが休憩になってしまった。そのせいか、帰り際は少しナイーブになっていた。

 

 「はぁ…」とため息がこぼれそうな時に、ふと気づいてしまう。あの階段の羞恥心は降りるときにも襲ってくる。

 僕は満腹と恥ずかしさでまた背中を丸めていた。

 

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