鷲尾翼のブログ

【エッセイ】#22『NUMBER GIRL青春物語』

 2019年2月15日。

 「NUMBER GIRL 再結成」のツイートが公式アカウントから発表され、瞬く間に日本中に広まった。日々新しい楽曲がYouTubeに流れる中、僕は自分が生まれる前の曲が好きなことが多い。その中には今や解散してしまったり、活動休止で歴史が止まってしまっているバンドも多い。NUMBER GIRLもそのひとつだった。

 しかし、僕の中で少し不思議な能力が昔からある。何となくだが、解散してしまったミュージシャンの楽曲やらMV、ライブ映像やらを見ていると「あっ、これが最後じゃないな…」とふと思う。

 そして、数年後。世に現れてくれる。要は、予知能力だ。無意識な。

 

 初めてNUMBER GIRLに触れたのは、高校生の頃。星野源の4枚目のアルバム「YELLOW DANCER」の初回限定盤に収録されていたライブDVD「星野源のひとりエッジ in BUDOKAN」で彼がアコギで「透明少女」を弾き語りカバーしていた。

 きれいなギターの音、歌詞の清々しさ、色使い…急いでスマホで「星野源 透明少女」と調べてどこかしらにあるだろう「透明少女」を探した。

 しかし、調べれば調べるほど星野源という名前ではなく、見知らぬバンドが出てくる。それがNUMBER GIRL。これが最初の出会いだ。

 調べ物も結論が付き、少し落ち着いた頃、星野源がラジオで何度もNUMBER GIRLについて熱く語り、そして再び「透明少女」を弾き語った。

 「これは、ちゃんと聞かなければ!」とその週の土曜日にレンタルショップNUMBER GIRLのベストアルバムを借り、透明少女を聞いた。

 電撃のようなサウンド、聞き取りづらい歌詞、何か怖い…あまりにも自分の好みとはかけ離れている音楽に僕は少し距離を置いては、「聞こうかな…」と登下校中に何度か聞く程度で世間で言う「青春」は過ぎ去った。

 

 それからしばらくして、テレビで音楽番組を見ていると、「このドラムがやばい!」みたいな特集で「NUM-AMI-DABUTZ」を解説していた。解説者いわく「唯一無二の演奏、CD音源のようにはなりたくてもなれない!」と貴重かつスゴイものらしい。気になったらYouTubeで調べて聞く。なんて便利な世の中なんだ。

 それを聞いたとき、自分の中のストライクゾーンにバシッとハマる音楽に巡り会えた喜びを感じた。そして、ここでNUMBER GIRLの凄さを確信した。

 そして、ふと思った。「なんか、最後じゃない気がする…。」

 予言は的中した。

 

 メールを調べると2019年3月28日。

 「当たればいいな…」という野暮な気持ちで応募したNUMBER GIRL日比谷野外大音楽堂のライブに当選した。僕はこれが初めて自分で申し込んで行くライブになる。

 もちろん、嬉しい気持ちもあったが、YouTubeNUMBER GIRLを調べてイメージが刷り込まれてしまっているのか、だいぶアウェイな環境にこの先向かうのかと察してしまった。

 フェスのような「席」というある程度の領域すらない自由地帯に、好きなバンドに向かってグルグル回り、ヘドバンをして、警備員に何人も止められて…。まるで戦場ジャーナリストにでもなったかのようだ。

 このアウェイな環境を少しでも溶け込むためには、アルバムを買うしかないと思い、その日の夜、AmazonNUMBER GIRL向井秀徳率いる別のバンド、ZAZEN BOYSのアルバムを片っ端から買った。正直、中古でも新品でもなんでもよかった。とにかくその時は「向井秀徳」を欲していた。

 その日からライブ当日まで暇さえあればiPodの「向井秀徳」というプレイリストをシャッフルで再生してとにかく向井秀徳の楽曲に触れまくった。

 

 2019年8月18日。

 NUMBER GIRL日比谷野外大音楽堂ライブ当日。

 会場に行くと、立ち見の人があちらこちらに座り込んでいる光景にNUMBER GIRLのスゴさよりもあのアウェイな環境に感じてしまった。逆鱗に触れぬように背中を丸めて足音を立てないように会場に向かった。

 会場が野外ということもあってフェス会場のようなものだった。年齢層はやや高め。チケットに書いてある席番号「B4-3」に向かうと、ステージに近い端の席ということもあってスピーカーがめちゃくちゃ近い。周りを見渡すと、同年代の優しそうな人も見当たらない。

 「どうしよう…」というアウェイな波に完全に飲まれてしまっている状態の中、ライブが始まった。

 

 下手から向井秀徳を筆頭に田渕ひさ子中尾憲太郎アヒト・イナザワNUMBER GIRLがステージに現れた。そして、演奏する前にメンバーが楽器の音チェックをし始めた。特にバスドラムのドンドンという音が目の前にあるスピーカーから強めのジャブのように襲い掛かる。

 正直、メンバーが現れる直前まで夢だと思っていたこと、アウェイに感じてしまった環境、「どうしよう…」と思っていたその思想を音チェック、時間にして数十秒だが、これだけでも「来てよかった…!!」と心から思った。

 そして、「大あたりの季節」を皮切りにライブが始まった。

 「鉄風 鋭くなって」「OMOIDE IN MY HADE」「TATOOあり」とライブまでに蓄えた知識、好きになった曲が演奏され、スピーカーからの電撃を浴び続けた最高の2時間だった。

 特に、向井秀徳の前口上から放たれた「透明少女」はあの頃の決して綺麗ではない青春時代の光景が走馬灯のように頭の中に流れた。そのくらい自分にはあの頃の支えであり、青春だったのだ。

 

 このライブで感じたことがもうひとつある。

 それは、「ファン」という形である。

 NUMBER GIRLは1995年に結成し、2002年に解散した。この7年間で生み出したオルタナ・ロックな楽曲は日本中に轟いた。その時代に青春を送った者はNUMBER GIRLと共に過ごした学生時代と言ってもいいだろう。このライブの年齢層がやや高いのはまさにあの頃の青春を送った大人が解散してから探しても見つからなかったパーツを求めるような高揚に浸っていたからだろう。

 なにより、NUMBER GIRLが演奏していた2時間、ずっと観客は「ヤバい」と声を漏らしながら全力で上半身を揺らしながらノッていた。

 あの空間はNUMBER GIRLはもちろん、青春を取り戻した大人とともに過ごした唯一無二な光景だった。

 

 きっと、これからNUMBER GIRLサウンドは我々のような10代・20代にも再び青春を与えてくれる最高のバンドだ。

 当然、僕の青春もNUMBER GIRLなのだ。

 

 

【関連記事】